私がDVDを見るのに使っているのがクリエイティブのDVDハードウェアデコーダカードEncorePC-DVD Dxr2です。もうかなり旧式のカードなので、現在店頭では見かけることは無いでしょう。このカードはアナログオーバーレイ方式でPCモニタにDVDを再生します。つまりビデオカードの出力をDVDデコーダカードに一旦入れ、DVDの再生画像とアナログ的に合成したのち、PCモニタに出力する方式です。え？ よくわからん？ まあ、この辺の話は今回の改造と関係ないからこれ以上説明なし。
さて、このアナログオーバーレイで出力されるDVD画面ははっきり言って、腐っています。見れたものじゃないです。ダメダメです。ということで、かなり腐ったカードです。それじゃなぜ使い続けているかと言うと、このカードには ビデオ出力（コンポジットとS端子）があり、この出力をテレビに繋ぐと、比較にならないほど綺麗な画質でDVDを見ることが出来ます。とはいえ、実はテレビを持っていないので実際にテレビに繋いだことがないんですけど。では、どうやって見ているかと言うと、S端子にアップスキャンコンバータXRGB-2を繋いでPCモニタに出力してみています。
信号の流れを図にするとこんな感じ。
さて、この方法でも十分綺麗に映っているんですけど、ずいぶんもったいないことをしていることがわかります。デコーダチップで生成されたデジタルコンポーネント信号（RGB信号の親戚みたいな信号）を一旦ビデオ（Y、C）信号に変換して、それをXRGB-2でRGBに戻してPCモニタに送るわけですが、途中のビデオ信号への変換で
画質が低下して、それをRGBに戻すときにもさらに画質が低下するわけで、せっかくのDVDの画質が損なわれていますよね。
そんなある日、ふと、ビデオ変換ICであるBt865Aのデーターシートを読んでいたら、面白い機能に気がつきました。このチップはデジタルコンポーネント信号（YCrCb）を受け取って、ビデオ信号（Y/C信号（S端子）とコンポジットビデオ）を出力するのですが、それとは別にもう一つの出力モードがあって、そのモード（RGBモード）にすると、アナログRGB（SCART）出力が可能になります。しかもそのモードにするには、内部レジスタをいじるような面倒なことをする必要がなく、 単に14番ピンをVccに接続するだけでいいんです。この程度の改造なら俺でもできそうだ、というのが今回の改造を思い立った経緯です。
ただ、このチップはQFPなんですよね。ジャンパ飛ばしにはちょっと気合がいります。幸い1mmピッチなので、普段コンマ５とかコンマ４といったQFPを相手にしている人なら楽勝でしょう。ま、めげそうになったら、「なんとかなるよ、絶対大丈夫だよ」の無敵の呪文 （わかる人にはわかる）でチャレンジです。
当初、改造によって得られたアナログRGB信号を直接PCモニタに接続しようと考えました。が、DVDカードが出す信号はテレビと同じ水平同期周波数約15KHｚの信号です。ところが最近のPCモニタではこの周波数では同期しません。たとえばCPD-G520だと最低周波数は30KHｚとなっています。従って、アップスキャンして周波数をあげてやる必要があります。そこで、またXRGB-2の登場です。XRGB-2にはビデオ入力のほかにゲーム機用にRGB入力があるので、それに繋いでやればいいはずです。
このXRGB-2のRGB入力端子はフロントパネルにある21ピンのコネクタです。たしかSCARTだかどっかの規格らしいけど良く知りません。で、21ピンも信号ピンがあるのですが、取説を読むと、実際に使われているのは、音声（右、左）、R、G、B、複合同期信号の計6本のみであることがわかります（ほかはGNDとNC（未接続）です）。さらに、音声は繋ぐ必要がないので、実際に 必要な信号はRGBと複合同期信号の4本だけ（とGND）であることがわかります。
さて、この21ピンとDVDデコーダカードを繋ぐケーブルですが、当初、市販の21ピン用のケーブルを買ってくるつもりでした。ところがこのケーブル、なにやら、PS2のDVDのコピーカードが外れるだかなんだかの騒ぎになっているらしく入手が難しいらしいとのこと。それに2000円程度するらしい。それでこのケーブルはすっぱり諦めることに。次に21ピンのコネクタを買ってきて自分でケーブルを自作することを考えたけど、この21ピンのコネクタが手に入らない。秋葉原に行けば300円程度で売っているらしいのだが、田舎じゃ入手困難。
そこで結局どうしたかというと、どうせ21ピンもありながら、使う信号線は4本のみなんだから、XRGB-2の21ピンコネクタを取っ払って、RCAコネクタを四つフロントパネルに付けることにしました。説明するより、写真を見ていただければわかるかと思います。
XRGB-2改のフロントパネル
個人的にはなかなか金ぴかで気に入っています。なお、RCAコネクタを４っ並べるためには開口部を少し広げる必要があります。
あとは、DVDデコーダカードの方もRCAコネクタを付けてあげれば、両者の間は普通の市販のビデオケーブル（黄色いやつ）で繋ぐことができます。でもこのビデオケーブルって２ｍで５００円以上するんだよね。４本必要だから結局２０００円以上。高いよねぇ。もっとも高級なコンポーネント接続用のケーブルを買うと桁が一桁違っちゃいますが。
さて、これからの本題、デコーダカードの改造です。ビデオ変換ICであるBt965Aの出力は既に述べたように２種類の出力モードがあり、まとめると次の表のようになります。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
CVBSはコンポジットビデオ信号、CとYはS端子のビデオ信号です。
両者のモードは１４番ピンによって変更することが可能で、このピンをVcc（VDD）に接続するとRGBモード、GNDに接続すると標準（Std）モードになります。改造前は標準モードになっていて、10、１２，１３ピンが使われて、ビデオ出力のコネクタに繋がっています。
改造前のこれらの出力ピンのコネクタまでの回路図は次のようになっています。
改造前の回路図
図には載せていませんが、10,12,13ピンの出力にはダイオードがそれぞれ付いています（サージ保護？）。
データシートによると、これらの出力信号は37.5Ω（75Ωの半分）の負荷に接続されることを前提に作られているので、７５Ωの抵抗と、ケーブルの特性インピーダンス75Ωとの並列接続でちょうど37.5Ωになるのかな？（大嘘かも）
なお、未使用の８ピンも図に示したように75Ω抵抗で終端処理されていました。
さて、これからRGB接続に改造するわけですが、RGBの各信号はなるべく同じ回路にしてあげないと、色ずれ、色のにじみの原因になります。ところが、Blue（8ピン）の信号だけが未使用だったために75Ωの抵抗しかついていません。そのため、Red、Greenも信号も同じように抵抗だけになるようにコンデンサ等を外してジャンパを飛ばしました。改造後の回路図は次のとおりです。
改造後の回路図
こうやって回路図を書いてみてから思ったんですけど、GreenとRedの信号についているコンデンサを取るべきですよね。実際の改造後のカードの写真はこれです。
改造後のデコーダカードとその拡大図
14ピンは、リード足をパッドから浮かせてGNDと切り離してから、23ピンとジャンパで接続しました。パターンカットでGNDと切り離そうとしたんですけど、パッドが2箇所でGNDで接続されているらしく、一箇所は切断できたのですが、もう一箇所がチップの内部に隠れていて、切ることができませんでした。（実はそれに気がつかなく、動作試験直前にVcc−GNDの抵抗を測ったら0Ωであせりました（大汗））
なお、写真撮影後、ジャンパ線とその周囲を樹脂（熱可塑性樹脂）で固めてしまいました（使用中に切れるのが怖いので）。さらに、写真に写っている同軸ケーブルを固定する金具はステンレス板を加工して作りました。製作途中で思いついたアイディアですが、がっちり固定することができて大満足♪
ついでに、写真に写っているコンデンサが紫色に見えるんですけど？とか、同軸ケーブルって本当に75Ωのヤツを使ってるの？ とか細かいことは気にしないで下さい。
すでに述べたようにXRGB-2にはRGB信号のほかに複合同期信号を入れる必要があります。しかし、デコーダカードのBt865AのRGB出力モードのときの出力はRGBとコンポジットビデオ（CVBS）信号だけです。実は 複合同期信号のかわりにこのコンポジットビデオ（CVBS）信号を使うことができるようです。実際、それでちゃんと写っています（写っているからといって大丈夫とは限りませんが）。データシートにもそのように使えるようなことが書いてあるようですし（ちゃんと読んでいないんですけど）、まあ大丈夫でしょう。
さて、以上述べた改造でめでたくRGB出力が可能になり、実際に動作させたところ、見事に綺麗に写りました。S端子接続との違いは正直に言うとあまり感じられませんが、少なくとも悪くはなっていないようです。
