自転車用HIDヘッドライト＆テールランプ製作記(2002〜2008 年)

最終更新2008年7月29日

自転車用ハロゲンヘッドライト＆LEDテールランプ製作記、HIDランプ,DC-DC昇圧コンバータ情報etcです。

• 仕様
• テールランプの回路図
• 「超高輝度」について
• HIDライト
• 12V1A出力DC-DCコンバータ作成
• 本体の作成
• 今後の予定

仕様

• ヘッドライトは10Wの小型メタルハライドランプ（HID）を予定
• テールランプは超高輝度赤色LEDを高視野角に改造したもの（現在は白色LEDも追加）
• 電源はラジコン用7.2Vニッケル水素バッテリー3000mAh。もしくは、CAT EYE 社製ハロゲンライトABS-10のバッテリーの予定でしたが，結局，単三エネループを6本直列×２並列の7.2V 4000mAhとなりました。
  
• テールランプはダイナモ（発電機）でも点灯可能。またダイナモ使用時は上記ヘッドライトではなく、ダイナモ付属のライト（自転車に元からつい ているやつ） が点灯するようにする。現在はダイナモを取り外してバッテリーのみにしています。

テールランプの回路図

あまり考えないで作った回路図です。

部品説明

• D1〜D4は整流用ダイオードです。この4本が1パッケージになっているのもあるのでそれ を使ったほうが便利です。また、これらはバッテリーの電流がダイナモ側に流れ込むのを防ぐ役割も果たしています。電圧降下ロスを防ぐためにシリコンダイ オードではなく，ショットキーバ リアダイオードが最適かな。


• D6はレギュレータが　出力電圧＞入力電圧　となったときに破損するのを防ぐためのもので す。


• D5はダイナモ使用時に電流がハロゲンランプの方に流れるのを防ぐためのもの。これがない と、ダイナモ使用時に、ダイナモが両方のヘッドライト電球を点灯しようとして、発電能力を超えてしまい暗くなってしまいます。


• 3端子レギュレータは東芝製 TA78DL05Sで、共立電子の通販で購入。送料込みで 250円程度だったと思います。出力5Vの低ドロップタイプで、最低入出力電圧が0.15V程度、入力２V程度から出力があるので、低速走行中でもちゃん と点灯します。ただし、最大電流が250mAなので、電球の駆動には使えません。


• コンデンサの容量は適当で、特に根拠はありません（もっと大容量の方がいいかも）。 0.1μFは積セラチップコンデンサ、電解コンはアルミ電解です。タンタルを使ったほうが小型化できるけど、タンタルは嫌いなのでアルミ電解にしました。 現在はさらに容量をアップして使っています。また、スーパーキャパシタ（電気２重層コンデンサ）を利用すると停止してもしばらく点灯が可能かも？


• LEDは超高輝度赤色LEDです。標準動作電流が20mAです。150Ω抵抗でちょうど 20mAになりました。

現在は改良して、赤色超高輝度を４個、白色LEDを１個並列接続で使用しています。LEDそれぞれに抵 抗が必要なことに注意。（白色LEDは75オーム程度で標準動作電流20mAになりました）　完成したテールランプはこんな感じです。

ママチャリによく使われている反射式テールランプにLEDを組み込んで見ました。

「超高輝度」について

結構誤解している人がいるようですが、輝度（光度（単位はカンデラ）も似た量）は光の総量を表すものではありません。同じ光源でも集光 レンズや反射鏡によって、いくらでも光度を変えることができます。光度は簡単に言うと光源を目で見たときのまぶしさの 大きさを示す量です。従って、LEDやレーザのように発光点が小さいものは光度（輝度）が大きく、蛍光灯のような発光体の面積が広いものは低輝度 な光源で す。
　また、同じ光源でも、レンズを使って光を集中させることにより光度を上げることが出来ます。超高輝度 赤色LEDはモールド樹脂をレンズ状にすることで発光体を出た光が拡散しないようにして一方向に光を集中させるとことで光度を上げています（もちろん、発 光体は普通のLEDよりも出力が大きいものを使っていますが）。
　従って超高輝度LEDを正面から見ると、目が痛くなるほどまぶしいけど、ちょっと角度がずれると急に 暗く見えます。
 
　さて、この超高輝度LEDをそのままテールランプに使うと、後ろを走っているドライバーがちょうど LEDの正面に来てしまうと非常にまぶしい思いをさせてしまい迷惑を与えることになります。従ってレンズ部分を削ってわざと輝度を下げてやった方が良いと 思います。また、レンズ部分を削ることにより、光が広く拡散しどんな角度からも光が見えるようになるので安全性もアップします。

ちなみに、光源が出す光の総量を表すのが光束（単位はルーメン）です（光度は立体 角あたりの光束です）。


例えば、100Wの白熱電球が出す全光束は約1500ルーメンです。もし、この電球が全方向に均 等に光を放射しているとするとその電球の光度は1500／4π＝約115カンデラとなります。もし、この電球に半球状の反射鏡（反射率100％）をつけ て、放射する方向を半分に減らし、残り半分に光を集中させたとすると　光度は1500／2π ＝約230カンデラとなって，２倍の光度になります。もちろん、反射鏡を付けても出る光の総量は変わりませんので、光束は1500ルーメン と変わり ません。

白色LEDを使用したヘッドライトについて

最近、白色LEDが安く買えるようになってきました。それで、これを 使ったヘッドライトが製作可能かかどうかを検討してみました。　


現在売られている白色LED（たとえば日亜化学）はΦ５品で5600mカンデラとずいぶんと光度 （輝度） が高いですが、前節で説明したように光度が高くても意味が無いです。ではこのLEDにはどのくらいの全光束があるのか興味があったのですが、残念ながらデータ が手に入りませんでした。しかし、いろいろ情報を集めてみると現在市販されているもの（2005年頃）で15ルーメン／W　程度しかなく、白熱電球 （ハロゲン度）と 同程度かやや優れている程度の発光効率しかありません。　とはい えここ数年，急激に効率がよくなっており，HIDや蛍光灯クラスの効率のLEDもぼつぼつと市販されつつあるようです。　ただし，まだ単体で10Wクラス の出力が出せるLEDは市販されていないようなので，光束の絶対量を欲しいときはやっぱりHIDかも。


ちなみに蛍光灯は80ルーメン／W、ナトリウムランプは175ルーメン／Wと世の中にはさらに効 率の良い光源があります （人工光源ではナトリウムランプが最高効率らしい）。

やっぱりメタルハライド（HIDランプ）かな？

車用ヘッドライトでかなり普及し始めているのがメタルハライドランプ（「HID」、「キセノン」、 「ディスチャージ」等メーカによって呼び名は違う）。　これは放電灯の一種で発光効率がハロゲンとは比較にならないほど良く、期待の光源です。　自転車用 にも，既に キャットアイ社20W球を使用した製品（スタジアムライト）や，最近では，10Ｗ球を用いたTOPEAKのムーンシャインＨＩＤエンデューロ等が市販さ れています。

メタルハライドランプは小型化が難しく、10W球もあるにはあるのですが、寿命が500時間しか なかったりといまいちだったりします。　しかし、WelchAllyn社 (日本法人)の Solarcは超注目。10W球ながら寿命1,000時間。しかも点灯回路（バラスﾄ）つきなので、普通の電池で点灯可能。　どうやら，自 転車用の10Ｗ　ＨＩＤ球はほとんどこの製品が使われているらしいです。

かつて，(株）ユニティー・エフ　UMS事業部で通販し ており，私はここで買いました。 12V入力の駆動回路（バラスト）込みで2万円程度でした。困ったことに国内ではもう入手できないようですね。ただし，上記ムーンシャインの交換用パーツ として購入する方法があります。

ということでメタルハライド（HID）ランプに よるヘッ ドライト作成(DC-DCコンバータ作成)

さて、12V　HIDランプを手に入れたのですが、12Vという電圧はちょっ と高すぎるうえに、許容電圧範囲12±1Vは電池駆動するにはちょっと狭い。そこでラジコン用電源として入手しやすい7.2VのNiH 電池を電源とし、昇圧DC-DCコンバータで12Vにすることにしました。　市販のDC-DCコンには12V1A出力のものがなかなか売っていないので自 作することに しました。


DC-DCコンのページが長くなったので別ページに分けました。
12V1A出力DC-DCコンバータ製作記

動作確認のために単3電池4本で点灯してみた写真。

本体の作成

DC-DCコンバータ回路はほぼ完成したので、ヘッドライト本体の製作に取り掛かっています。
また、リニアテクノロジーのリファレンス付きコンパレータLTC1440を入手したので、これを使って、ロー・バッテリー警報装置を付けようかとも思って います。
完成までのつなぎとして，キャットアイの10Wハロゲンライト（ABS-10）を入手したので、バッテリー部とハンドルに固定するブ ラケット部はABS-10 を流用して、ライト本体のみを作ることにしました。そのランプユニットは放熱を考え、内径35mmφ程度のアルミパイプに収納しようかとおもっているので すが、なかなか売られていない（売っているに は売っているのですが長さが4mだったり）。。。。と数ヶ月間計画がストップしていました。

そんなある日、リレーバトンってたしかアルミパイプで、太さもちょうど単1用のマグライトと同じ程度の太さだったよなあ　っとふと思いつきました。調べて みたところ、外形38〜39mmφ、長さ約30cm、重量100ｇ前後。内径は不明ですが、重量とアルミの比重から逆算するとちょうど35mmφ前後であ ることが判明。しかも値段は1000円以下と格安！！　ということで購入してみました。


TOEI LIGHT とありますが、光のライトとは関係なく、れっきとした陸上競技用のバトンです。内径は36.5mm、肉厚1mm弱です。バラストを中に入れると1mm程度 の隙間が生じますが、ホースバンドのようなもので外側から締め付けると密着させることが可能だと思われます（バラストの熱を放熱させるために密着させる必 要がある）。
　写真の下に写っている黒い部品2点は、キャットアイ社の自転車ライトHL-HD100　から 取り出したブラケット（写真下）と　ブラケットとライト本体をつなぐコネクタ（写真上）です。このコネクタとバトンとの間を接続する部分はアルミ板で型を 作り、FRP樹脂で肉付け作業しました。　しかし，出来上がってみると，かなり重たくなってしまったので，半分くらいにカットしてしまいました。

CADによる設計図	0.5mmと1.0mm厚のアルミ板で組み立て	FRP樹脂で肉付け（白色はエポキシ樹脂）。見た目は汚いですが塗装すれば問題なし

配光

HIDに限らず，最近のライトは明るくなった分，まぶしいですよね。正面からやってくる逆走 馬鹿にはいい薬だ！なんて意見もありますが，善良な歩行者に迷惑をかけるのも悪いし，空を照らしても意味ないので，上方に向かう光を下方に反射させるため の配光板を組み込んで見ました。　室内で点灯させた感じでは，うまく光を抑えてくれています。なお，開口部には，CD-Rから切り出したポリカーボネード 板がはめ込んであります（いわゆる樹脂レンズってやつですね）。HIDは紫外線を出すので，ランプの光を直接出すのはよくないそうです。

完成？

だらだらと作成していて・・・気がついたら製作開始から早6年（滝汗　バッテリーの自転車への取り付け方法がなかなか思いつかな くて煮詰まっていたのもありますが。　バッテリーフォルダーも当初は完全自作する予定でしたが，面倒になったので，シマノのツールボトルの中に電池ボック スとかDC/DCコンバータを押し込めてしまいました。スイッチやコネクタをツールボトルのフタ（下の写真に写っている黒い円形のもの）に取り付けて完 成。


バッテリーフォルダーの横についているのが，ツールボトル内でバッテリーが暴れるのを防ぐためにアルミ板とスポンジゴムで作成したスペーサーです。

今後の予定

とりあえず，無事に動作しています。ランタイムはおそらく2時間強程度だと思います。バッテリーの残量が減って，電圧が低下した ときに警告ランプが点灯するような回路を取り付ける予定です。